撮り鉄迷惑行為警笛にも立ち去らず、列車の出発を98分遅らす。JR札沼線豊ケ岡駅

2019年12月1日更新 view: 90 view
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30日午後6時25分ごろ、空知管内月形町のJR札沼線豊ケ岡駅構内で、線路上に男性が侵入しているのを石狩当別発浦臼行き普通列車(1両)の運転士が発見した。警笛を鳴らしても立ち退かず、この列車の出発が98分遅れた。同駅から乗った1人を含む乗客約10人に影響が出た。

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JR北海道によると、男性は写真撮影のために線路に入っていたとみられる。岩見沢署に通報し、警察官が駆けつけた後、立ち退いたという。

線路立ち入りは、立入者自身の生命身体に対する危険は当然のこと、列車の運行が止められてしまうことによる鉄道事業者への影響、利用者への影響などにも波及することになり、重大な結果を招く行為である。重大な事象に発展する危険を内包しているという点で決して軽視されるべきものではない。

「科料」は「罰金」より軽い

改めて線路立ち入りのみに着目した場合、それに対して用意されている刑罰は鉄道営業法第37条による「科料」である。

「科料」は刑法第17条に定められており、1000円以上1万円未満の範囲で刑罰として科される。これも「財産刑」である。罰金は1万円以上とされているので(刑法第15条)、科料は財産刑のなかでも比較的軽い刑罰が用意される犯罪(侮辱罪(刑法第231条)、軽犯罪法違反など)に使われる。

刑罰からいうと線路立ち入りは軽微な犯罪ということになる。鉄道に対する重大犯罪である往来危険罪(刑法第125条)、汽車転覆等及び同致死罪(刑法第126条・致死罪では死刑もあり)の前提で行われることもあり、線路立ち入り自体を軽微にしていてもさほど問題はないということもあるのかもしれない。

かつては、線路に耳をあてて列車の音を聞くという風景が当たり前のように語られたりもした。線路を家路にするという風景もあった。
列車の速度も本数も多くないのんびりした時代あるいは路線では、線路立ち入りを許してもそれほど危険も多くなく、処罰の要請も高くなかったということもあるかもしれない。

「黙認」ではなくなってきた

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社会的にも線路立ち入りについては厳しい目が向けられるようになり、黙認されるということもなくなりつつある。
新幹線では、「新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法」(新幹線特例法)では、線路立ち入りについて1年以下の懲役または5万円以下の罰金とされている(同法3条2号)。
新幹線の列車が主たる区間を時速200km以上で高速運転されているため、その運行の安全を妨げる行為をより罰する必要があるからである(同法1条)。
しかし、いまでは在来線の高速列車の速度も向上しつつある。例えば、京成電鉄の「スカイライナー」は最高時速160kmで運転されており、時速200kmには達しないものの相当程度に高速化している。

新幹線特例法が速度による区別だけでなく新幹線と在来線の線路の構造にも着目しているとしても、在来線でも制御システムや線路付近の構造物は高度化しており、それで区別する必要性は小さい。
物理的な線路の構造も連続立体交差などで新幹線と同様閉鎖的な線路も増えている。
いまや線路立ち入りによる影響は新幹線でも在来線でも質的に変わるものではない。重大な影響を未然に阻止するために線路立ち入りを罰する利益は「科料」で済まされるようなものではないように思われる。実際上の処罰に不都合がない、ということで正当化できるものでもない。
それにもかかわらず、100年ひと昔のように線路立ち入りに対する処罰が「科料」にとどめられているのはいかがなものであろうか。

鉄道営業法は、鉄道輸送の具体的なあり方を定め、旅客等の安全と円滑な利用を確保するために定められた法律である。もちろん今でも存在してしかるべき規定が多い。

現代にそぐわない規定も

「座席がある場合に乗車可」(同法第15条2項)とか、「乗車券に記載された駅に下車しなかったとか、乗車券に指示された等級よりも優等な車両に乗ったら罰金または科料」(同法第29条)といったような、現代の鉄道の営業風景にはそぐわない規定がカタカナ書のまま残されている。

鉄道営業法を受けた鉄道運輸規程(これもカタカナ書)についても、前回記事(2月15日付「不正乗車は『運賃3倍』徴収、時代に合っているか」)で言及した増運賃制度を2倍までと規制(鉄道営業法第18条2項、鉄道運輸規程第19条)するのがいいのかという疑問がある。
さらに、鉄道運輸規程では、6歳未満の者は原則無賃(同規程10条第1項)、12歳までの者の運賃を半額とするということも規定されているが(同規程第10条第3項)、ほかの施設などの利用料金がそれ以上に細分化されていることなどに照らして、このような一律の扱いを前提とした規定のままでいいのか、ということも検討されるべきであろう。

鉄道営業法が制定されたのは1900(明治33)年。日本国内を初めて鉄道が走った1872(明治5)年から28年後のこと

当時の鉄道は、明治政府の全国的統一、富国強兵、殖産興業政策を推進するための、人や物を運ぶ陸運の重要な輸送手段の位置づけであった(国交省HP内「日本鉄道史」)。
1881(明治14)年には日本鉄道会社が発足するなど私設鉄道建設のブームが訪れ、1906(明治39)年には鉄道国有法によって国有化による鉄道の全国的な発展が進められた時代である。

鉄道営業法は現代に合っているか

今では、当時国有化された鉄道も民営化。鉄道事業者の企業理念の中でも交通機関として「安全」をうたうのはもちろん、「お客様へのサービス」を言及するものも多い。
例えばJR東日本の企業理念の中には「私たちは、『究極の安全』と『サービス品質の改革』に向けて、挑戦を続けます」とある。
鉄道は今も昔も重要な輸送手段であり公共交通のひとつである。その視点からの営業に対する規制の必要性自体は今も変わらない。
しかし同時に、輸送手段が多様化し輸送に付加価値が生ずる現代では、鉄道のサービス業としての側面も無視できない。一律に法令で規律するのが時代にそぐわなくなっている部分もあるのではないだろうか。
形式面からみても、カタカナ書の法律はイメージ的に権威主義的な香りが残り、市民から見て法令になじみにくく遠いままにしてしまう。鉄道営業法も現代の鉄道にそぐわないところがあるかどうかを、いま一度、形式面、実質面の両面から検討をする時期にあると思う。

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