賃金が働きぶりを上回る中高年世代高齢者雇用で増す「重荷感」

2019年12月15日更新 view: 96 view

「働かないおじさん」問題

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世間で人手不足や人材確保の難しさが叫ばれる中、味の素とLIXILグループ、ファミリーマートなど、大手企業が11月以降、相次いで早期退職を発表した。
こうした企業の多くは、収益悪化によってリストラを迫られているというより、早いうちに人件費の高い中高年社員という「重荷」を降ろしたいという思惑があるようだ。

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オンワード、希望退職350人募集 百貨店販路苦戦で

衣料品大手のオンワードホールディングス(HD)は6日、2020年1月末までに販売職を除く40歳以上の社員を対象に約350人の希望退職を募ると発表した。子会社のオンワード樫山の社員が中心で、HD全体(約5260人)の社員数の7%程度に当たる。主要販路である百貨店での販売が苦戦する中、組織を効率化し、収益性の改善につなげる。

希望・早期退職、6年ぶり1万人超え 若手に原資回す

調査会社の東京商工リサーチは6日、2019年1~11月の上場企業の早期・希望退職者の募集(または応募)が、1万人を突破したと発表した。年間で1万人を超えたのは6年ぶりで、18年1~12月(12社、4126人)の約3倍の人数に上る。20年以降も、足元の業績が好調な企業を中心に既に7社、計1500人の実施が判明している。

――なぜ今、中高年社員の早期退職が相次いでいるのでしょうか。
早期退職の構造は過去数十年、全く変わっていません。年功序列型の賃金システムでは、中高年になると賃金が働きぶりを上回るケースが増えてきます。企業は彼らを定年まで雇い続けることに負担を感じ、早めに退出させようという圧力が働くのです。
1980年代に55歳だった定年は60歳に延び、希望する社員は65歳まで働き続けることも可能になりました。さらに政府は成長戦略で、70歳までの就業機会確保を打ち出しています。もちろんずっと昇給し続けるわけではありませんが、中高年の社員が会社を去るまでの期間が延びたことで、企業は彼らをより重荷に感じるようになった、と言えるでしょう。

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――彼らはなぜ「働かないおじさん」と見なされてしまったのでしょう。
「働きぶりが給与に見合わない」のは彼ら自身の責任だけでなく、最初にお話しした年功序列型の賃金制度が原因でもあります。そして多くの日本企業は、中高年社員に管理職のキャリアパスしか用意していませんが、実際にはこのルートを外れる人も出てきます。
日本の「メンバーシップ型」雇用システムは、職務や勤務地などが限定されない雇用形態で、企業側が社員の勤務地や配属先の決定権を握っています。このため社員は自律的に、専門性を身につけることが難しいのです。中高年の社員が管理職コースを外れてしまうと、多くはスキルも持たない上に、今さら新たな部署でキャリアを再構築するのも難しく、行き場を失ってしまいます。中には、職場に貢献できずにモチベーションを失い、定年まで会社にしがみつこうとする人も出てきます。

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管理職と専門職、若手のうちに2つの道を用意して
――解決策はありますか。
「働かないおじさん」になってからでは遅すぎます。企業は20~30代の社員に対して、管理職とは別に、専門技能を身につけるためのルートを設けるべきです。専門的なスキルは50代、60代になっても維持できるため、若い頃とさほど変わらぬ成果を期待できます。
働きぶりが賃金に見合っていない中高年社員に対する、最も手近で短期的な効果が見込める解決法は「リソースを減らす」こと、つまり早期退職です。しかし、それは本来活用できたはずのリソースを捨ててしまうことでもあります。資源を資源として使えるようにするのが経営的にもベストの解決策ですし、労働者に対する企業の役割でもあるはずです。

――それは日本企業の中に、職務の限られた「ジョブ型」に近い働き方を作るということでしょうか。
そうです。「ジョブ型」の導入も今に始まった議論ではなく、長い間続けられてきました。
日経連は24年前、「新時代の日本的経営」という論文で、雇用の将来像を打ち出しました。その中ですでに、労働者は正社員と「高度専門能力活用型」という名のジョブ型社員、そして短期雇用労働者に3分されるという図式が示されています。しかし労働者は結局、正社員と非正規雇用に分かれただけで、「専門人材」は増えませんでした。メンバーシップ型の日本企業において、本当の意味で専門職が求められる状況にはならなかったということでしょう。

制度改革の余力ない企業 高齢者雇用義務化が「ジョブ型」後押し?
――ジョブ型の必要性が高まっている今なら、導入が進むのではないでしょうか。
政府の規制改革推進会議は、ジョブ型の普及に向けた法整備などを提言しています。しかし企業の自主性に任せても、なかなか前進しないのではないでしょうか。
なぜなら、雇用制度の改革には大きなエネルギーが必要だからです。企業は、持続可能性を高めるためには改革が必要だと分かっていても、目先の経営に精一杯で、なかなか手を付けられません。改革にエネルギーを割いたら職場が回らなくなる、あるいは競争に負けてしまう、というパラドクスに陥っています。
ただ、高齢者の雇用義務化の流れが、ジョブ型への移行を促す可能性はあります。中高年の社員が社内に増えれば増えるほど、企業としては、戦力として働いてもらうための対策を講じずにはいられなくなるでしょう。その中で、若手のうちに専門的なスキルを身につけさせる動きが加速するかもしれません。

若手は危機感持ちつつ、社内で打てる手を打つ 軽々な退職は禁物
――若手社員の中には「働かないおじさん」を冷ややかな目で見る向きもあるようです。
「働かされ盛り」の若手社員の目には、中高年社員が恵まれているように映るのかもしれません。ただ実際のところ、日本の若者も就職に関しては、国際的に見てかなり恵まれています。
大卒者は新卒一括採用によって、専門的なスキルがなくとも正社員就職の道が開かれています。ジョブ型の欧米企業は、欠員補充での採用が中心なので、実務経験のない新卒者が職に就くのは容易ではありません。薄給・無給のインターンをしながらポストが空くのを待っている若者や、失業する若者もたくさんいます。
ただ若者の「冷やかさ」の中には、中高年に差し掛かった時、自分たちも彼らのようになってしまうのではないか、という漠然とした不安が含まれているのかもしれません。

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takamna

ノーマルライターです。

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